『マザーテレサの名は知れぬ』
座一


昔見たドキュメント番組
捨てられて ひどい仕打ちに 涙する子ども
親戚や 知り合いの家 たらいまわし
どうしてこうも 大人は汚い
どうしてこうも 大人は身勝手だ
小さいころに感じた私
そんな大人になった私


我が子と、他人の子とでは
違いがでるのは当たり前だ
四十肩のオーバーワークと ギリギリの生活水準
ごはん粒の均等さに 自信が持てない
みんなが マザーテレサの様だったら
マザーテレサの名は知れぬ


万年マンネだった私は
たとえば ごはんを食べる時
誰より先に お箸をとり
何より先に 美味なものをついばむ


与えられることに慣れ過ぎて
お腹の中だけ満たされて
汚い作法と知っていながら


キレイごとはよしなってんだ
自分の子供奪われても 他人助けるのかい
すべてが聖人のように 正しいのなら
マザーテレサの名は知れぬ


清くありたい 清らかでありたい
できれば 自分も そうでありたい
誰にも平等な 清らかな人の名前
だからといって どう目指そうと
欲望や疲労に負けて
苦しく醜くもがいてしまう
できないからこそ その名前が輝く
真っ黒な泥塗り顔に 真珠の涙が浮かぶんだ


教えてマザー
バカの一つ覚えで 
与えて与えて すっからかんかい?
薬の土嚢で 涙をせき止めろ
それしか 策はないのかい?

教えてマザー
他人をどう愛したらいい?
何かを奪われそうで 怖くって
自分の生活を 守りたくて仕方がないんだ
そしてそんな汚い自分が 嫌で嫌で仕方ないんだ

すがりつく情報網(インターネット)
検索ワード 『マザーテレサ 平和 どうしたら』
出てきた言葉に 撃ち抜かれた


(ノーベル平和賞のインタビュー)


「どうしたら世界は平和になるのでしょう?」



「家に帰って、家族を愛してあげてください」




きっとみんな 黒い自分と戦ってる
あくせく走って あくせく学んで
それでも真っ白い赤ん坊を産んで
静かに息を 整えはじめる


今度は私が
与える番だ







自由詩 『マザーテレサの名は知れぬ』 Copyright 座一 2013-01-17 21:43:31
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