悲しみは悲しみを生まない
ゆったいり

そうだね、きみのいうことは正しい
でも僕はそう思わない

どちらか、じゃないんだ
ここに道はなくて、君の見渡す限り広がっているだけ

コンクリートは壊れるけれど
水は決してこわれない

皆、ひとより優れていて
皆、ひとより劣っている
見る角度の問題さ

天国のレースは最も暗く、混沌とした糸で編まれている
美しい心はねばねばしていてまとわりつき、
とても黒くて重いものから生まれる

人の目というのはね
暗すぎても見えないけれど
明るすぎても見えないものだ

それのまわりを探っても何もわからない
いちばん根っこを掴まないと

地の中のマグマはどろどろと回っている
あの空の大気もぐるぐると巡っている
ぼくたちの血潮もどくどくとめぐっている
あの海は雲になり、それから雨になり
そして川と流れ、また海となる
そう思えばぼくたちのうんめいやしあわせが、
昼と夜を繰り返すこの地球のように、
暗いところと明るいところをぐるぐると回っていても何も不思議ではないんだ

何が良くて何が悪いか
世界を切り取らないとそんなことは決まらない
君はどんなふうに切り取られた世界にいるのだろうか

よろこびはよろこびを生まず、悲しみを生む
そんな厄介なものはさっさと分け与えてしまおう

悲しみは悲しみを生まない
よろこびを生むものだ
そんな大事なものは、
無理な笑顔に埋めてしまわず、
まわりの人に流れ込まないように、
じっと温めてほしい

そうしたらきっと、
やわらかい笑顔ができ
暖かい涙が流せる


自由詩 悲しみは悲しみを生まない Copyright ゆったいり 2013-01-17 20:33:50
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