見殺し
たもつ


商工会館が閉鎖された街に
バナナ売りの声が響く
ゼラチン質の船に乗って
目の見えなくなった犬は
遥か遠洋へと向かう
たて笛の隣にある空き地に
僕と彼女は小さな家を建てた
悲しみ、という言葉を覚えてから
僕らは賢さと愚かさを手に入れた
朝食後、
ソファーでじゃれあいながら
いつか僕を見殺しにする
僕のことを思った
 
 
 


自由詩 見殺し Copyright たもつ 2013-01-16 21:26:46
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