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はるな


疲れている。咳がつづいている。
疲れているし、混乱している。
混乱と混乱のすきまに、しずかな時間があるのだが、すきまの時間がどんどん短くなっている。わかっている。どんどん短くなったのちに、まただんだん長くなり、混乱は安寧のすきまに存在するだけになる。そしてそののちにまた混乱が幅を増やす。
同じことだ。もう何年も円を描いている。似たようなものばかり描いている。小さな円で構成された、大きな円を描いている。

ちか頃は、はっきりと、苦しいのだと思う。からだががたぴし言っているのがわかる。疲れているし、なんていうか、もうわたしにはどこから説明してよいのかわからなくなってしまった。

話してみることはした。切実さが足りないんだ、というと、みな、何に?とか、いつ?とか、聞くので、疲弊してしまう。何もかもなのに。何もかもに足りない!具体的なこと?具体的なところまでいつもたどり着かない!ぜんぜんたどり着かないんだ。何を言っているかわかりたいのに、いつもそこまでたどり着かないんだ。もっと話をしてほしい。つまり何を考えて何を伝えようとしているかってことを。
でもわたしはぞっとしてしまう。
もしかしたらこの人たちは何も伝えようとしていないんじゃないかと思ってしまう。あるいはそれこそが伝えるべきたった一つのメッセージなのかもしれない。必要でない、という。
じゃあどうしてここにいるの?

考えていたい。あきらめたくない。わたしが誰であるかをもっとわかりたいし、そのためにあなたが誰であるかを理解したい。知りたいし、知ろうとしていなきゃだめだ。生きていて、死んでいくんだから、知らないままでは怖すぎる。不安なんだ。そもそものはじめから不安があり、世界はうつくしいものとしてあり、完結している。不要だ。世界はわたしなしで完結しているし、わたしも世界なしで完結しそうだ。それなのに生きている。一人になってしまうのはこわいし、一人でいられなくなるのもこわい。すべてはすべてだ。意味は無意味だ。無価値だけがすべての価値になりうる。地平は一つではないが、あらゆる事象はたびたびひとつの地平に閉じ込められ、腐ってゆく。

せつないんだ・・それに疲れている、苦痛なんだ
もっと上手に息継ぎをする方法があると思った。けれど、望むものがたとえ術であっても贅沢と詰られるのを恐れている。何もかもが消えないんだ。それなのに多くのことを覚えていられない。時間は相変わらず左右にちらばっているし。いちどでもいい、あなたの世界をみてみたい。そして、わたしの世界がそれほど異常ではないんだということを―あるいはどの世界もそれなりに異常なんだということを知りたい。疲れた。わからない、と言われて悲しむことに疲れてしまった。知っている。わたしはべつに、理解を望まれていない。どの瓶にも水はすでに満ちている。悲しい。せつないんだ。なぜみんな空き瓶を見つけようとしないんだろう?


散文(批評随筆小説等) 1/15 Copyright はるな 2013-01-15 23:22:52
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