凧(カイト)
Lucy

僕は水色のグライダーではなく

鳥の中でも一番ありふれた
雀やカラスでもなくて

ひばりのように高く
カモメのように鮮やかに

はばたきたいと
願う

風に乗り
絶妙なバランス感覚で
海を見下ろし

一本の糸に繋がれて
ああその糸を切りさえすれば

僕は自由に
更なる高みに
羽ばたける

糸を切ろうと
力の限り
引っ張り続けた

僕は自分一人の力で
遥かな海の向こうまで
飛び翔ることを
希いつづけた

その糸を決して離さずに
握り続ける誰かの手を

ただ疎ましく
憎く
蔑みさえして

いつか自由に
いつか独りで
遠くへ
さらに遠くへと
飛んでいくことを夢みていた

風を切り
雲を追い越し
願う力で
飛んでいるのだとかたく信じて

いつの日か
(たぶんもうじき)
糸を持つ手が消える時
僕は自由に
そして失速するだろう

逆さまに
斜めに
流れる空と海の間を墜落しながら

僕は思い出すだろう
糸の名前を


自由詩 凧(カイト) Copyright Lucy 2013-01-13 17:23:05
notebook Home 戻る  過去 未来