歌う理由
Mélodie

空を歌うのが鳥ならば
土を歌うのが土竜で
水を歌うのが魚ならば
炎を歌うのは薪でしょうか

私は何を歌うのだろう
生まれた時から音が満ちて
それは時に揺蕩う色彩の粒子
それは時に傷口から溢れる滴
後ろ髪を引いて
盲目の心を揺らしては
横隔膜を突き上げて
痛みと悦びに産声をあげる

私は声を持たない
風のように浚う祈りを持たない
たしかにここに、歌は
身を八つ裂きにせんとばかりに
今、生まれたはずなのに

光満ちて
窓を開ければ絶望の朝が来る
空を鳥が歌い
土を土竜が歌い
水を魚が歌い
炎を薪が歌うのに

人は尚更何を歌うというのでしょう
私は今更何を歌うというのでしょう

生まれ落ちた愚かしさ
その罪その惨めさを
忘れぬために歌うのです


自由詩 歌う理由 Copyright Mélodie 2013-01-13 03:14:38
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