切符
もっぷ

黄唯色まであと少しの
三月の入り口で
ため息まじりに

  切符ください

と言っている老婆がいる
本当にゆきたいのか
わからない

  切符ください

まだ、佇んでいる駅舎の売り場で
あと少しで霞んで
立ち去ってしまう
きょう、

あしたゆき切符売り場で

老婆のため息は
後ろの行列を
うんざりとさせる
売ってもらえないのだ
それなのに
  ください
とほらまたため息が

さびしいことは察する
みな、そしてわたしも
、ゆきたいだろう
あしたへ
赦されたいだろう
あしたへ

  切符ください

いきなり船頭が現れ老婆の手から
六文銭を奪い
彼女を
連れ去っていった


自由詩 切符 Copyright もっぷ 2013-01-13 02:12:45
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