忘れてしまおう
吉岡ペペロ

目の前で強盗に母が犯されていた

母はぼくや自身の生命を守るためにそれを許しているのだと思った

だからと言ってふたりの命が保障されている訳ではないだろう

ぼくだけが今から逃げ出して後から強盗を殺そうか

そんな行為も馬鹿らしくなっていた

ぼくだけが今から逃げ出して事件を忘れて生きてゆこうか

そんな営為も馬鹿らしくなっていた

忘れてしまおう

忘れてしまおう

あんな奴にぼくは掻き回されたくはなかった

寄る辺ないしるべに依存するくらいなら忘れてしまおう

ぼくはおどろくほど静かに簡単にその場から姿を消した

目の前で強盗に母が犯されていた

母はぼくや自身の生命を守るためにそれを許しているのだと思った









自由詩 忘れてしまおう Copyright 吉岡ペペロ 2013-01-12 09:23:41
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