誰が殺したコマドリを
ドクダミ五十号
はい私ですと雀は言うた
「矢羽の羽はわたくしもの」
「何故に」と問う事はなかった
事実は人間の仕業であったから
誰がその死体を見たのだ?
死んだ小鳥の硬直した体を
ハエが言う
はい私です
充分に腐敗しておりましたから
柔軟でしたよ
血は流されただろう
誰がその血を受けたのだ
魚が言う
私です
幸いとは薄く
流れ去ると
知っておりましたが
その時血は濃いものでしたので
埋葬の為の装束は誰が整えた
硬い装束の者が言う
はいわたくしです
あまりに不憫でしたので
大急ぎで仕立てました
墓地に穴を掘ったのは誰だ
ふくろうが言うた
それはわたくしが掘りました
なんども繰り返された埋葬の為
地面は柔らかでした
誰が葬祭を執り行った
黒い羽を調えながらカラスは問うた
はいわたくしですとミヤマカラスが言う
わたくしは聖書を
とても小さい聖書用い
さて
では誰が葬送の付き人に
疑問は其の場を一層沈黙させた
けれども
はいわたくしですに沈黙は破れた
雲雀であった
続けて言う
高みで舞う
相応しいかと存じまして
灯明はどうしたのだ
直ぐの答えがあった
ヒワだった
それはわたくしよ
おうちには松脂があって
取ってきたの
喪主は誰だ
誰が務めた
鳩がその胸を
普段より膨らませ言った
それはわたくしです
愛をこの胸に
常に抱え
嘴には真実を
相応しいでしょう
棺は重かったであろう
誰が担いだのだ
皆の視線はトビに集まった
トビは詠うように言った
恥ずかしいですけれど
それはわたくしです
強い足と翼は備わっておりましたから
棺は覆われていなければならん
誰が覆ったのだ
ミソサザイは小さい体を一層縮め
それはわたくしです
お恥ずかしいですが充分な羽がありませんで
さえずりで包みました
これに涙せぬ者がおりましょうか
そこで賛美歌を歌う者がおりました
ツグミです
彼は普段口を噤むのですが
歌わずにおれないのでした
そして牡牛は済んだこととせずと
雄々しく言いました
まだ葬送の鐘は鳴らされておらぬ
わたくしが引き受けよう
幸いにも綱も引けるし
力もある
響き渡る鐘の音に
鳥たちは可哀想なコマドリが
今こそ弔われたと思い
涙するのでした
それは晴天から降る慈雨と呼ばれ
人間どもは驚くのですが
鳥たちの心には永遠に刻まれているのです
なにせ
今日も降るのですから