打つ。
元親 ミッド

鉄パイプが固い大地に立て掛けられて

その先端は、浅く立てられた爪のように

大地に少しだけ引っ掛かっている。



これを石頭(セットウ)で叩くのだ。



背がねじれ、肩が軋み、

そこから鞭のように腕がしなって

鎚は、勢いよく放たれる。



が、しかし鎚の一振りは、

乾いた金属音だけを響かせて

虚しくも弾かれる。

叩く速度と同じ速度で

勢い良くも弾かれる。



鉄パイプは、ただの鉄パイプのままだった。



だから、また叩く。

背をねじり、肩を軋ませ、

鞭のように腕をしならせて、

手首でスナップを利かせる。



クワァァァァァン・・・・・!



目には見えない。

変化もわからない。

がしかし、地面はかすかに掻き分けられて

砕石が立ち、粒状土は飛沫となって飛び散って

爪は、確実に食い込みつつあった。



叩け!叩け!叩け!叩け!叩け!

殴れ!殴れ!殴れ!殴れ!殴れ!



己を一心に叩き込め。

飛散る汗を大地に降らせ。

単純に、切実に、豪快に、集中しながら

己を、その一撃に乗せて叩け。



やがて、鉄パイプは裂け始める。

鎚の力に敵わずに。

ぴりり、ぴりぴりと空気を震わせ

鋼鉄の百合が花開くのだ。

それでも構わず叩き込め。



やがてその音に変化が現れる。

鉄パイプが土を噛み

空気を震わせていた金属音が

ゴンッ、ドゴンッ!と重たい音に変化する。

鉄パイプは打ち込まれている。

固い、固い大地に。



やがて、鉄パイプは、大地の一部のようにそそり立つ。

大地と同じように、頑なに。



初めの一撃は、てんでお話にもならなかったくせに

叩き続けて、叩き続けて、

遂には、その思いをとげたのだ。



何かをしようとすることは

この鉄パイプを打つことと似ている。

繰り返し、繰り返し、

根気よく続けなければ

なかなかに成せぬものなのだ。


自由詩 打つ。 Copyright 元親 ミッド 2013-01-09 00:12:30
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