冬がくると悲しくなる
川上凌

冬がくると悲しくなる
きっと悲しくさせる要素が多いから。
雪原にぽつりと立ち竦んだ自分を想像するだけで、不安になる。

この町はわりと豪雪地帯で、
ドカドカ雪がふる。

朝になるとつもってるなんてザラで。

幼い頃からの光景なのに、
なんの汚れもない白を踏むと
申し訳なくなる。

だから、人の靴跡をなぞる。

そうして靴跡だらけの道ができて、
その踏み跡も風景の一部になる。

でもうちの犬は、
そんなのまるで気にしないように
だれも踏まない白の上に
小さく花柄を散らして
静かに春を植えるのだ。




自由詩 冬がくると悲しくなる Copyright 川上凌 2013-01-08 23:00:26
notebook Home 戻る