ぼくとつ
田園

ぼくとつ



一人のぼくとつを見た
五十手前のぼくとつは
頭を低く低く下げ
ただ芸を身に付けようと
足掻いておられたもくもくと

「芸を極めるか
 家族を愛するか」

どちらかを取れと言われていた
それはひどく厳しい男だった

私は芸が無い
家族も無い
だからぼくとつの想いは分からない
だが男はそう言い放ち
ぼくとつは男の手を取り泣いていた

その必死の意味を
笑っても泣いても
おそらくいけない

ぼくとつはただ真実一路
極めんと欲しているのだから

ただ個人として願う
私も ぼくとつのようでありたいと
だがら私は
深く頭を下げ続ける
人を見くびれないぼくとつとして
必死を知りたしと願う
幼き
ぼくとつとして



自由詩 ぼくとつ Copyright 田園 2013-01-07 13:20:31
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