レース
ドクダミ五十号

調律をした
二輪車が
周回路の直線を
駆け抜ける

咆哮はワウと呼ばれる
振動を伴う
それは乗り手を栄光のゴールに

恐ろしい競技だと思う
安全に返って来る事を
願って
部品を作る
千分の五ミリまで
神経を尖らせ

全てが一品制作だ
解る人は
それを信頼して
競技に及ぶ
応えてくれようと

器用さは自身の
研鑽の結果だ
フライスも旋盤も
もっと大きなボーリング・マシーンも
操る事で生きて行けた
根本に出自があるだろう
捨て子である事の
当然の結果として

治具さえも自作する
先人の技を盗んで

ヨーロッパの選手から
一通の手紙が来た
「貴方の部品を使って優勝出来ました」

テレックスだったが手紙だろう
精密加工は天才の才では無い
「教えて下さい」そう願っても
工具がぶつけられる
そりゃあそうだろうよ
生活がかかっているもんな

見て盗む
そうして器用になったんだ

レースは命がけだ
そこで戦う競技者は
審美眼も一流だ
部品は大抵の場合
一瞥して良いものを見抜く
戦う鋭利を



自由詩 レース Copyright ドクダミ五十号 2013-01-06 21:25:32
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