高田開彦の告白
吉岡ペペロ



その川は一方通行のアスファルト道に挟まれていた。川面は夕陽が当たると黒く見えた。
高田開彦が逮捕されたのはちょうど夕方の川が黒くなる頃だった。
川の両サイドを七八人の警官が彼を捕まえようとその距離を縮めていたときだった。
彼の名を呼ぶ妻の声が彼を振り返らせ警官たちにあっという間に揉みくちゃにされたのだった。
組み敷かれ彼の頬はアスファルトを冷たいと感じた。このまま寝てしまえば楽になれるかなと夢想し自分の居場所がこの暗い川であることを受け容れ力を失っていった。
妻の顔を探そうとは思わなかった。
いつかこうなることは分かっていた。こうなることを望んでいた。
川は夜ますます暗く黒くなるのだろう。
警察官に車に押し込まれ簡単な書類を慌ただしく作るのを見つめるともなしに聞いていた。
警察官たちはまじめに働いていた。自分もかつてはそうであったように。
これからの数日間の取り調べを思った。
高田開彦の告白は彼に関わるすべての人間たちを人間不信に陥らせるだろう。
警察の同僚たち、家族、親戚、友人、近所の人々、この事件を知ったすべての人間。
彼を乗せた車が動き出した。彼はまるで自分が見送るような感じで彼を乗せた車を見つめ続けた。


携帯写真+詩 高田開彦の告白 Copyright 吉岡ペペロ 2013-01-04 21:54:02
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