カルマ
nonya
僕の家の水道水には
カルキとカルマが含まれている
カルキは浄水器で
取り除けるかもしれないけれど
カルマはおいそれと
消えて無くなってはくれない
僕は毎朝
カルマで顔を洗って
カルマで口をすすぐ
朝食にはたいてい
懐かしいカルマの風味が漂う
熱い味噌汁を飲む
僕は毎晩
カルマで垢を落として
カルマに首まで浸かる
晩酌にはときどき
気取ったカルマの氷が浮かぶ
ウヰスキーのロックをやる
口から入ったカルマは
喉でせせら笑って
胃で悪態をついて
腸で愚痴をこぼしながら
排泄されていくけれど
トイレから出た後に
カルマで煮出した健康茶をつい飲んでしまう
そんな情けない自分を
どうしても解放したくなって
コンビニでミネラルウォーターを
買ってみたけれど
ラベルをよく見たら
富士山麓の天然カルマと印刷されていた
悪業悪業悪業悪業悪業たまーに善業
生きることはそれだけでみっともない
身体と言葉と心の乱気流に翻弄されて
何度も胴体着陸を試みたりする
それでも
馬鹿の一つ覚えみたいに
カルマ臭のする汗と涙とヨダレを
だらしなく流しながら生きる
意味なんかてんで分からずに
生きてしまう