去りゆくものたち、生まれくるものたち
木屋 亞万

ビニールの金魚
尾はヘドロと浅い海
袖で眠るヘビの嘔吐
男と来たばかりの憂鬱だけ
さよならはブリーチで染めたのに
ワイングラスの方代わりに夕暮れと鼾が
踊ろう久しぶりの密林とバカンス
秘密は虫ごと煮しめたばかり
ハイウェイを横切るノコギリの雛形を
途端に腫れた皿の隙間から銃撃
靴底に敷き詰めたミシンで城壁を
胸は萎んで眼が膨らんだ
レーズンを除くなら
いい匂いになって汚れたね
酒で濡らせば銃創は沁みる
しばらく見ない間に乾いたね
バイオリンの弦の初期微動
渇いていく喉の仏壇に
血潮はつめたく金属の装い
管内は奥へ入り込む配置
尿意はすでにできている
使い古された動かない紅
背中に浮き出るファイヤー(骨
誰でもあいにきてくれる
やわらかいの?)眉間も乾燥地帯
走り出した事務次官の戦火
禁止したばかりの緊縛と
流麗なしわに満ちた怒り
アクセルを踏めば好きなだけ
緑の魚も赤く熟した
泣きすぎると焦げてしまう
焼かぬ蛍の電子時計
マイクロフォンを押し殺して
耳元から立候補した
うなじのおぼつかない毛先が
遊びに映るいざないの丘
習い事がある自転が倒錯し
伏し目がちな蜂の戯れ
見上げれば天井に隠れ
空は酔いの最中に炎上
抱き寄せた幹の抗力に
へばりついたゴムとプラスチック
麻の感触とさめざめとした米粒
赤らんだ山の辺の爪を切るたびに
飛び散った乳首を拾い集めては
泣き止まない恋心を
生まれる前に殺して回る



自由詩 去りゆくものたち、生まれくるものたち Copyright 木屋 亞万 2013-01-01 01:01:11
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