大丈夫であるように
高瀬

指先から立ち昇る
煙の先の
窓際はすでに冬だった
確かすぎるほどの白い気配を
膝をたたんで見ていた
痛みの季節

救いはあるのかと巡らせれば
換気扇はまわりつづける
救いえるのかと
白い靄は
なにも答えてはくれなかった
空っぽの手のひらと乾いた喉とで
ままならないことばを手繰ったとして
過去のきみたちはいずれ死ぬ
わたしの知らないところで

吐いても吐いても足らない
ことばはもう過剰だった
必要なものはどこにもなく
ただ、からからと回りつづけるだけだった

つま先立ちの
わたしはいつもその足先で
どこへも行けずに想いばかり
抱えたまま膨らんでいく
海を想え
そしてその部屋の梁を想え
やがて再び崩れ落ちる夜を想え

わたしだったきみたちへ
わたしであるわたしたちへ
わたしたちであるあなたたちへ
靄のままに託したことばを
祈りのように明け渡す
いまのわたしたちに
そっと、手を合わせ、

祈れ、祈るしかないわたし。


自由詩 大丈夫であるように Copyright 高瀬 2012-12-31 22:38:27
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