海まで歩いて五分
subaru★

海まで歩いて五分
日当り良好の 
離れの寝室の
大きな窓辺から
隣の国が見えてくる

そんな気がして
今日は霞がないから
風来坊になって
紙切れのように
軽く飛ばされてみた

少し遠くまで飛べそうな
風のジェットは
晴雲を一気に突きさし
あっという間に
空は剥がされ

垂れた滴で
この海までもが
一瞬で赤く染まる

夢の中は
真っ赤に染まりきって
偽りだけれども
不思議と爽快である
それが夢なのだろう

飛び回るのは短くて
ふと醒めた頃は
延々と続く水平線のように
果てしなく
長い一日が始まるのだ

この現実を
海の彼方へ
蹴っ飛ばそうと試みても
この軟な足では不可能だ

歩けたらスグそこなのに

目と鼻の先の海だけが
いつまでも待っていてくれる
そんな気がするのは
僅かながらの望みが
そうさせてくれるのだろう

海まで歩いて五分

彼は眠っている間に
必死に歩いている
潮の香る海辺を
夢の中で


自由詩 海まで歩いて五分 Copyright subaru★ 2012-12-27 19:30:38
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