コールドプレイ
和田カマリ
わたしの彼氏は
中部大会で入賞した事もある
腕利きのバーテンダー
だけど全然気取らないで
お客とワイワイやっている
彼の初めてのキャリアは
氷屋さんだったそうで
そのせいか氷を成形するのが
無茶苦茶にうまい
塊を手のひらに受けて
アイスピックで丸くして
グラスの中に投げ入れると
それはまるで
ルームライトに照らされて
妖しくたゆたうマリモみたいだった
サービス過剰な彼
ただ丸くするだけじゃ物足りなくなって
色色なものを彫刻するようになった
たとえば
氷のペニス
もう笑うしかなかった
ある夏の夜
お店のエアコンが馬鹿になった
暑くって暑くって
もう営業なんてしてらんない状態
彼ったら「ごめんなさい」って
お客さん全員を帰した後
しばらくして
携帯で呼び戻したわたしを
強引にカウンターの上に乗っけると
LOVEな解体ショーを始めた
もちろん
わたしマグロじゃないけどね
腕も足も毛穴が閉じていて
ぜんぜん汗が出ない
ディープな冷房病のわたし
その反動なのか
顔からの量はハンパない
もう化粧がドロドロ
「やめてよ!」
あたし手を伸ばして
彼の胸を押し上げて
SEXを止めてもらったの
「何だよ、暑いのがダメなわけぇ。待ってな。」
体操用マットみたいに
わたしを覆っていた彼は
エイッと跳ね起きると
おもむろに氷を取り出し
愛用のアイスピックで
一分もかからずに
クリスタルペニスを作ってしまった
「じっとしてろよ。」
彼ったら「作品」を指でつまむと
そのままわたしの燃えている
石焼ビビンバの中につっこんで来たの
「冷たい!」
再びガバッと
被さってきた彼に
体の自由を奪われて
わたし彼のナスがママだった
ただ・・・けっこうクールで
夏はこんなのもありかなぁ〜
なんて
火照った顔からだんだん
汗が引いていくのが分かった
侵入してきた彼の道具に
奥に奥に追いやられた氷が
ついに子宮まで届いちゃった
恥ずかしい話その後
わたし絶叫コースターで
往っちゃたのよね
その夏はそのプレイが
病み付きになっちゃって
わざとエアコンを消して
彼と二人で没頭してたってわけ
異変は突然だった
股に異常を感じたわたし
仕方なくお姉ちゃんを呼び出し
「ちょっと見て欲しい」
こんなの母さんにも彼にも
絶対言えないじゃない
パンティを脱いで
机の上に片足を上げ
下からお姉ちゃんに
覗いてもらったの
「う・・・」
絶句するお姉ちゃん
「なんか、膣の中が緑なんですけど。」
あたしカンジタになっていた
どうりで痒いはずだわ・・・
言っとくけどお兄さん
あんなプレイするもんじゃないよ
カンジタで感じたなんて
ジョークにしても笑えない
さあ、もう11時回った
男はそろそろバイバイ
ここからはガールズオンリー
ごめんね
店から一杯おごらせて
お客さん醤油うこと!
彼女は男装のバーテンダーと振り向き様にディープキスを始めた。気が付くと、まわりは女子同士のカップルだらけ。ノリで入ったこの店は、なんとレズビアンバーだったのだ。店のおごりの水割りの中に、ペニスの形をした氷が一つ、ルームライトを浴びて妖しく緑色に輝いていた。