リコリアス
Seia

交差点の一角が更地になっていて
かつてそこに何があったのか
ひたすら思い出せなかった

いつの間にか始まっていた工事は
何を壊したのか ーがが
がー を持ち去ったのか
ひとつもわからないまま
重機もヘルメットも消えていた
打ちっぱなしの
コンクリートを残して さら、さは

そこにあった建物には がちゃ
誰が出入りして ばたむ
いつから建っていたのだろう

ほんとに建物があったのか
前提条件すらあやふやで


ほろりほろりとふる雪は
手にふれる直前でとける ふわるふ


海馬の奥、深く
記憶の岸から、別の岸へ
人はそれを忘れるという


コキールに残ったホワイトソースを
泡とともに洗い流してしまう するりら


うつし、うつされて
なにもかも、なにもかもが
かわって、おわっていく


砂浜に箔押しされたサヨナラに
母なるものが手を伸ばす ぶくぶ、く



交差点に立つ私を
誰か、覚えているだろうか

交差点に咲く私を
いつか、思い出すだろうか


自由詩 リコリアス Copyright Seia 2012-12-24 17:49:47
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