理想と現実
清風三日月

僕には忘れなれない…
クリスマスがある。

君と出会った頃…
僕にはお金がなく…
君には何も…
買ってあげられなかった。

それでも…
クリスマスくらい…
何かプレゼントしたいと思い…
使えるお金を財布に入れて
街に出掛けた。

この時ばかりは…
街は活気に溢れ…
行き交う人々の顔も…
笑顔に見える

クリスマスの…
プレゼントと言えば…
アクセサリーだったり
バッグだったりする…
のかも知れないが…
僕の中では…
オルゴールに決めていた。

とにかく僕は…
店に駆け込み…
そして愕然とする

なぜなら…

僕の予算で買える…
そんなオルゴールは…
子供の手の平に…
乗ってしまうような…
小さなものしか無かったから…。

惨めだった…。

大したプレゼントは…
出来ないからと…
色々考えて決めた…
オルゴールのプレゼント。
しかしその…
オルゴールですら…
小さな物しか買えないのだ。

これが現実だ…
とレジの列に並ぶ。

笑顔の列に…
僕も並ぶが…
悔しくて涙が溢れ出した。
目の前の笑顔の列が
心に突き刺さった。

それでも買った…
オルゴールを…
大切に大切に…
家に持ち帰ると…
お菓子の詰まった…
長靴の底に…
小さなオルゴールを…
こっそりとしまう。

そして…
こんな小さなオルゴールでも
君が喜んでくれたら
嬉しいなと…
君が帰るのを…
待った。
期待と不安…
本当にドキドキしたのを…
今でも覚えている。

僕を気遣って
クリスマスプレゼントは…
スーパーで売っている
お菓子の長靴が良いなぁ…
と言ってくれた君。
本当に優しかった君。

イブの夜を共に過ごし
日付が変わると共に…
お菓子の長靴を…
君に渡した。

嬉しそうに…
お菓子の長靴を…
開けていた君は…
底に隠した…
オルゴールに気付き…

『あ!何かある!』と目を輝かせる。

『これ何?』と言いながら
箱からオルゴールを…
取り出した君は…
泣き出した。

『嬉しい』と…
ニコニコ笑いながら…
泣いてくれた君を見て
僕も泣いちゃったじゃない。

質素なクリスマス…
だけど心がポカポカ暖まるクリスマス…
幸せなクリスマスだった。

今は離れて…
逢うことも出来ないけれど…
君の笑顔が今日も…
どこかで弾けますように。

メリークリスマス♪
メリークリスマス君へ♪


自由詩 理想と現実 Copyright 清風三日月 2012-12-24 16:11:27
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