橋のうえ
月乃助
夏の陽にやけた
見まがう
まっかな顔の 猿でした
林檎をさしだしたのは、 山女の手
それとも
猿のほうでしたか
やってきた
凍てつく冬の むごたらしさを
誰かに
ののしりたくて、
猿はといえば とおく
森に赤い 命をつなぐ
万両のあじが どうとか
想っている
「 ねえ、森の木の間に眠る いく重にも時をまとう椿の花は・・・・・ 」
だれも そんな女の話は、あきあきで、
死んだ子を産んだ 赤ぎつねのナミダとか、
青サギに 子を食べられた カワセミの繕う笑い声ならなおさら
聞きたくは ないのです
二の腕の刺青は、帆船の
稚拙なそれは、チクショウのおろかさなのか
海すらみたこともないくせに
ごらんなさい
わたしの 内に 海がある
わたしの薄い胸をだきたいか
愉楽の潮のかおり を 知ることができる
彼はもう、、
橋の下をながれる 小川の
楽の音は、終局の冬のレクイエム
、、人の顔で 男のようなまなざしを
落としていた
わたしは、ただ
それを確かめたくて
男の腕に
細い腕をからめる