1年
うんち

はじめまして、と言って、町に住み始めたね。
日々、白い顔をした町を刻んでいくと、
黄やピンクや赤が顔を出してきて、
それとなく、そのまま、口にして、飲み込んで、喜んでいたね。
この町にどんな食べ物屋が営んでるか、もうだいたい分ったね。
この町は静かにしゃべる町だね。

わたしが、いま、気付くこと。本を読んでから気付いたね。
昨日、本を読んだら、
本に書いてはいなかったけれども、
「思い出にしるしを付けておきなさい」と、言っている気がした。

同じ部屋で眠るようになってから、もう一年が経ったね。
もう?まだと言うべきかな。まだまだ始まったばかりだから。
わたしたち、昔話をたくさん持っているけれど、
ずいぶん、大人になったね。
大人?あなたはずっと子供のままでいたいだろうけど。
こどもが彩るクレヨンの色彩のまま生きているあなたが、
お金を稼いで帰ってくることが、とても、へんてこで、
お笑い芸人みたいで、わたしは小さく楽しくて、大きく嬉しい。

町を刻んでいたら、妙な紫色をした色がでてきて、
困ったね。黒ずんだ人間の垢が
取れなくて、毎日、皮膚に張り付いてきて、困ったね。

あなたが寝ている隣で、
夢をみているときのあなたの、
くりくり動く眼球が入ったまぶたが揺れるのをみて、
いつまでもいつまでもわたしたちは続いていく、そんな風に思い込んでいる。

ひかりの中に立ちすぎて、それが、ひかりだということさえ意識しなくなっていた。

わたしたちの現実は、すこしずつすこしずつ、かたちを変えていく。


自由詩 1年 Copyright うんち 2012-12-21 21:10:27
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