夢に見るのは過去だけだ
イナエ
上空を通過する物音で目覚め カーテンを開ける
暗い夜景が流れ込む窓に 目を見開いた未来が
こちらを見ている
慌ててカーテンを閉じ 再びベッドの倒れ込む
わたしの見たいものは薄くなった未来などではない
春の野に 蕩々と流れてきた過去の
きらきらした波頭 陰など消してしまう輝き
どこにあったのか 何であったのか
とうに忘れた栄光
空を舞う銀色の縁取られた綿毛の雲
を眺めている二人の抱擁
何度もおぼれかかった危機を
する抜けてきた過去の人生
今では 未来には祈りさえない