電話をかける
すみたに



いまの楽しき日々を織りなして
夜の更けるほどに高まる二人の喜び。
終りを知らぬ二人の会話は
星の間を飛び交う電波。
そのまま夜明けを迎えて白む外
それも知らず、喜びは
行きつくところを知らず
きられることなどない電話。

だが今や、切られたままの電話は
手放され、割れた鏡となっていた。
両手は森にたれ下がり、飛び行く
鳥は喜びの、日々に嘴を刺した。
着信音は震わせて、
思いは間欠泉のようで、
コール音が繰り返されるたび、
高鳴なっていく、それは不安で。

ああ、氷壁の鼓膜を破る声はもう
聞こえないのか…… 天蓋を眺め、
冷たくあしらう風に滲んで降りて来た新月、
黄色をしていた巨大な反射鏡、
それはあなたの名の色だった。
おお、われは衝動にかられる! 
あなたに電話をかけては喜びの歌を再び求め、
わたしの本心を再びあなたの人差し指に捧げたいと!



自由詩 電話をかける Copyright すみたに 2012-12-20 19:13:05
notebook Home