月の子
凪 ちひろ

冴え々え光る三日月と
冬の冷たい夜気の風
今一度(ひとたび)正常な神経を戻せるようにと
ただただわたしに降ってくる

(赤子が欲しけりゃ薬など
 飲まん方がいいんだけども)

あれほど美しい月ならば
古(いにしえ)の神代の時代のように
あの月の子を宿すのも
たいそうおもしろいと思われる

うちのうさぎは茶色いうさぎ
月にも行かず 餅もつかず
今日も干し草をもぐもぐと
楽しそうに食(は)んでいる

取り込み遅れた洗濯物を
せっせ せっせと運ぶうち
乾かない服やシーツたちが
わたしの手や指を冷やした

しがらみの多い世の中のこと
わたしの病んだ神経は
おんなじ道を行ったり来たり
マリアに祈るキリスト教徒の横顔が
いっそ羨ましく思われて

わたしは今宵 この月に祈る
細い 細い わたくしの
運命の道をうっすらと
永く照らしてくれるよう
あとは自分で歩けますから……


自由詩 月の子 Copyright 凪 ちひろ 2012-12-19 22:02:00
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