母の行方
梅昆布茶

おそらく僕の知らない
無数のははがいたのだろうと思う

まあ今も昔も聞いたってこたえないだろうが

母の遺品を整理している

書道用具

浦和のなんとか堂とかいうところで購入した
そこそこ良い筆もあるらしいが僕にはわからないし
いまさら書道家になるつもりもない

卓上ミシン

嫁が使う気がないのかあるいは使えないので
たぶん友人の中二のお姉ちゃんのところにゆくことになると思う

押し花の額はさしつかえないので飾っておくことにする

沢山あった備蓄食料はほぼ僕が食べつくしてしまったので
もう数十年前の缶詰が出てくることもなくなった

電子ピアノは団地の八百屋さんに貰われていった
楽譜が残っていても僕は読めないのでひくこともできない

自転車は免許の無い嫁が乗り回しているが
電車賃を浮かすために何駅分も遠出するのだという
そのわりには太いのだが
ちかじか自動車学校も卒検だそうだ

母の骨を姉に分骨するために
骨壷から頭蓋骨とおもわれる断片や
いくつかの白いものを小さな袋に入れる

父の骨もそうやって姉のところに行った

今は母はB5サイズの白いプラスチックのフォトフレームのなか
姉が撮った一年ぐらい前の写メのなかで微笑んでいるように見える

家族葬も火葬もすべてそれですました

もうすぐ来る勉強机や子供たちのために
すこしづつ母を整理してゆかなければならないとおもっている








自由詩 母の行方 Copyright 梅昆布茶 2012-12-16 09:50:19
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