夜と白 Ⅵ
木立 悟





つまさき立ちの分だけ
人形は高く 人形は遠く
川の行方 径の行方
銀に銀に 昇るものたち


窓が入った袋のなかから
血まみれの手でひとつを選んだ
曇の多い午後
未だ光の無い家々


定規に埋まる空の隙間から
花や手足が降ってきて
地に触れては消えてゆく
小さな匂いの波紋を残して


光が光の窪みに落ち
すぎる曇の脚を見ている
海にそそぐ瀧
打ち寄せる鈍の花


何も無く明るい双子の夜に
涙ふたつを手に 手を握り
雨上がりの径に降る
途切れ途切れの息を歩む


雪につづく血のあとを
たくさんのものが追ってゆく
姿を持たない意志の群れ
つないだ夜の手にひらく窓


花が花に応える声が
冬の原を行き来する
壊れかけた灯は信号のように
遠くを遠くに呼び寄せる


白く白く 透ることなく
時おり見えなくなりながら
傷 水たまり 夜の岬
ひとつの窓のようにまたたいている
































自由詩 夜と白 Ⅵ Copyright 木立 悟 2012-12-16 03:18:39
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