世界に絆された朝
綾野蒼希
世界に絆された朝
ぼくは新しい季節を病んで
この際 庭をつくろう と思った
夕闇に隠れるのはいつも
小さく白いものでなくてはいけない
遮光カーテンに締められる心地よさ
あるいは 安寧!
ただそれだけを望むことで
死のかたちはうんとやわらかく
受け入れやすく
ああ 決してこの肉体を幽閉しないように
ぼくは今 ここにある事柄を一つひとつ
いつか腐葉土のそれに返さなければ
貢献しなければ――
やみくもに走ること
堅牢な扉の外側へ放たれること
もう数えきれないほどの
「波間」にもたれかかっているのだ
ぼくは だから 遠く近く
汀に眠る人たちを眺めつづけている
そこには年老いた少年
踊り狂う死体
明度を失ったまなざし
けたけたと笑う電柱のしみ
まどろむ土曜日の歌
すべてがいとわしく寄り添って
ねじを巻くのはかえって魂の不健康だと
ある乞食が瞑想の果てに慟哭し――
それはつまり
公園から追放されたことによる
人はみな 息絶えて
くるくるまわって
まぶたからこぼれ落ち……
逸脱せよ とぼくは泣く
(ぼくは泣く)