規定という罠に嵌る
kauzak
ベン・シャーンは線の魔術師
展覧会のフライヤーを見ながら
頷いていた僕は浅はかだった
企画展の最後のセクション
彼の最晩年の連作版画
そこに並ぶのは線の魔術師に相応しい
震えるような線で描かれた素描
のような画だけではなく
例えば墨絵のような
微妙な濃淡を駆使して描かれた
モノトーンの獣の画
例えば精緻な筆致で描かれた
暗闇の中で仄かに発光しているような
色彩豊かな名もなき草花の画
例えば大胆に省略された
抽象画のような
波が渦巻く碧き海の画
決して線の魔術師
だけではないことを痛感する
型などなく
与えられた画題に対して
自分が納得できる手法で描く
ただそれだけだったのではないか
けれどそれを作品として昇華できる
意思と技量がなければできないこと
ベン・シャーンは線の魔術師
などには縛られぬ
自由で誠実な画家だった