規定という罠に嵌る
kauzak

ベン・シャーンは線の魔術師
展覧会のフライヤーを見ながら
頷いていた僕は浅はかだった

企画展の最後のセクション
彼の最晩年の連作版画

そこに並ぶのは線の魔術師に相応しい
震えるような線で描かれた素描
のような画だけではなく

例えば墨絵のような
微妙な濃淡を駆使して描かれた
モノトーンの獣の画

例えば精緻な筆致で描かれた
暗闇の中で仄かに発光しているような
色彩豊かな名もなき草花の画

例えば大胆に省略された
抽象画のような
波が渦巻く碧き海の画

決して線の魔術師
だけではないことを痛感する

型などなく
与えられた画題に対して
自分が納得できる手法で描く

ただそれだけだったのではないか

けれどそれを作品として昇華できる
意思と技量がなければできないこと

ベン・シャーンは線の魔術師
などには縛られぬ
自由で誠実な画家だった


自由詩 規定という罠に嵌る Copyright kauzak 2012-12-10 23:49:49
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