風の名前
まーつん

風には名前がない
そんな重たいものを 引きずってはいない

風には身体もない
そんな窮屈な箱に 押し込められてもいない

捕まえることも 飼いならすこともできない
たとえ押し留めようとしても 逃げ道を探し出すのが風の常

風以上に自由な存在を 私は知らない


人には名前がある
そんなにも重たい看板を 首に掛けて歩く

人には身体もある
そんなにも窮屈な箱の中に 小さな命の灯火を囲っている

不安に捕まえられ 社会に飼いならされ
理性の手に押し留められて 出口のない場所に囚われる

人以上に不自由な存在を 私は知らない


晴れた日の空から駆け下りてきて
もつれた髪をかき乱す 一陣の風よ

お前の名前を教えておくれ

その姿は愛に似て

決して目には 見えやしないのに

お前以上に美しい存在を 私は知らない


自由詩 風の名前 Copyright まーつん 2012-12-08 13:22:24
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