稼働域フェチ
るるりら

前略 神社の境内のながい石畳の階段を歩いて きずきました
わたくし カドウ域フェチなのでございます
鳥はイキモノの可動域を知らせてくれる 
「愛(う)い奴 もちと 近こうよれ」と おもうほどに 福々しく
そうするわ「ちゅん」と 答えてくれるから 愛らしい

そんな私の母は 普通の人の視野の壱%しかないのでございまして
鳥というイキモノが大嫌いなのです
突然 視野に入ってくるので 恐怖なのだそうです
すずめすら 嫌いなのでございます すずめの可動域か許せないのでありましょう
それはそれは ヒステリックに嫌うのでごさいます
ですが
そのサエズリは その可動域の素晴らしさ この世界を 絶賛してる


前略 海風にコートの襟をたてて歩いていて きずきました
わたくし 稼動フェチなのでございます
船はイキモノとしての人の稼動域拡大の本能の勃発
もちと 近こうよれ そなたの船体にかかれた異国の文字を見せよ
オーライ「ん ぼーーーーーーーーーーーーーーーっ」と汽笛でも
聴かせてくれた日にゃ 最高でございます
うちの父は むかし船を造っていたのであります
いまごろも 父の造った どこかの遠い海のタンカーが
大海にゆれているのかもしれません
その船首にぶつかる波の音は この世界を 渡ろうとしている

前略 ひとりの部屋で 自由について考えて きづきました
自由とは 自分を由(ゆえ)にすると書くけれど 
【由】の字は 松花堂弁当のようだと 思うのです
十字に仕切られた 枠の中が 発想の稼働域なのでございます
鳥あり魚あり山の幸あり 山海が踊るのです
わたしの箸は 狙います

かまきりが 獲物をねらって ずっと おなじ姿勢で
たたずんでいます その稼働域も 素敵
蟻が 行列をくんで歩いています その可動域が 素敵
いつだったか郵便ポストの上で 一週間の座っていた牛蛙の
狭い狭い 稼働域も素敵



カドウ域が 好きなのです
あなたの内面にある たぶん だれにでもある悪意には
 興味がないのです
それは わたしの共有できる【カドウ域】
とは違うから


わたしの 腕が すべての人をハグできればいいのに
私の稼働域に あなたは居ても良いと思いますか?
ハグして いいですか?


自由詩 稼働域フェチ Copyright るるりら 2012-12-08 09:32:39
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