電気でできた賢者
竜門勇気


ラジオをつけたまま
テレビを見ている
悲しみを集めて結晶を作ったらキレイだなと思う
一日が終わる

ラジオは喋りながら
人を殺す
朝からそれを数えている
今日も僕の名前は読みあげられない
一日が終わる

テレビの世界は死者の世界
死んだ役者が死んだ役者を撃つ
悲しみの結晶は多分血の上澄みみたいに赤いと決める
一日が終わる

八月の終わりに
血を瓶に集めたことがある
顔の出来物が悪化して
血が止まらなかったから
さみしくなってそんなことをしてしまった

八月の終わりは
瓶に溜まった血が
赤黒い水とただ赤い上澄みにわかれるのを
部屋で見ていたころ
それを思い出させるためにこの部屋を訪れるのかも知れない
僕の全部をノックして
返事を訊かずにドアを開ける

テレビの音も聞かなくなった
ラジオを見かけることもなくなった
コンピューターの前でキーボードを叩いて夜を過ごす
一日が終わらない

僕以外の誰かが
今日も消えて行く世界で

一日が終わらない
一日が終わらない

十年前は明日が来てた
十年前は昨日を捨てれてた

一日が終わらない
一日が終わらない


自由詩 電気でできた賢者 Copyright 竜門勇気 2012-12-06 22:09:29
notebook Home