神話—デッサン
前田ふむふむ

        前田ふむふむ

鳥が飛んでいる
ひとつの銃弾から
ひとが生まれる
羽が砕かれ
動かない鳥のなかから
声が生まれる

声は
夜の輝きである
ひとりが声をあげれば
陰鬱な
暗闇を
わけもなく
立ち入らねばならない

となりに自分の幻影を
引き連れて
糸杉の並木をいくども
疲れ果てるまで
歩かねばならない

傷口をひらいた自由
のような
奔放なものたちと
無為の会話を
かさねなければならない

その苦痛を
削ぎおとして
永遠のなかで
いずれ記憶されずに
痩せほそるもの
そして
回転するメリーゴーランドのように
とどまらないものに

ふたたび
きみは声をあげるだろう
その曲折
  
   
銃口は 
しずかな佇まいで
分厚い名声を携えて
 夜の木漏れ日のなかに
鳥は化石のように
低空を
いつまでも旋回している

そして
生まれたものは
お互い
しがみつき合っていて
いつまでも
死ぬことはない







自由詩 神話—デッサン Copyright 前田ふむふむ 2012-12-06 06:26:29
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