タバコを一本
凪 ちひろ

タバコを一本吸う夢を見た
しけた不味いタバコだった
そういやわたしはあれを一度も吸ったことがない

「一本目は不味いもんだ」
「二本目で上手いと思ったら中毒だ もうお終いだ」
と予備校の歴史学の先生は言っていた


そんなことはまあいいとして
今朝散歩に行ったら
近所の空き地がすっかりなくなって
家が何軒か建っていた
そこは昔 白いうさぎを散歩に連れて行った 思い出の場所

うさぎの散歩というのも奇妙だ
リードをつけて歩いた
そういえば 最近は猫にもリードを付けている人がいる

「うさぎなんて食べるもんだ」
と言っていた祖父は いつの間にか
二代目の我が家の茶色いうさぎを見て
「かわいいなぁ。いくらや?」
と言うようになった


どだい 常識やら人の思惑やらといったものは千変万化
その通りに生きようなどとは無謀な試みだ


タバコも吸いたければ吸えばいい
副流煙に気を付けて

ただしやりたいことがあるのなら
死なない程度に吸うことだ


わたしには やりたいことが随分あるし
おそらく祖父や父と同じで
肺はそれほど丈夫ではないので
これからも吸わないでおこうと思うが

しかし 健康を少々ふいにしても
吸いたい時が来れば吸うかもしれない


人間なんて変わるもんだ
己も 他人(ひと)様も

生きたいように生きもせず
損するなんてばからしい


自由詩 タバコを一本 Copyright 凪 ちひろ 2012-12-05 22:07:06
notebook Home