『 を の 人 』
るるりら

「を」の人

鍵穴を
開くための 旅をしている


夜空は うすら明るかった
暗かったのは むしろ樹木のあたりだった
いきものの息遣いがするほうが 暗かった
なにか隠されているものの
秘密が多すぎて なにかがまじりあっているあたりが暗かった

夜空は 見れば見るほど 明るくなった
暗かったのは 水音のするほうだった
精神は
刃の上を舌なめずりするみたいに ぎらついて
開こうとする

うすらあかりの中の鍵穴を
愛を
夢を
わたしのためのあなたのための
世界を
歌を


開こうとするヒントは
錠前みたいな「を」の文字に つづく
多くの言葉たち

フェイクの言葉も あのときの嘘も 
それらを暴くときですら 「を」という鍵が
さしこまれた途端
世界は開かれ
開かれ
開か


かれた空の下
「を」の人は 夜空を見上げる


自由詩 『 を の 人 』 Copyright るるりら 2012-12-05 11:44:05
notebook Home 戻る