サイレン
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久しぶりのまばたきが
わたしにしみわたる
たった一度で世界をすべて
洗えるとは思っていないよ
日々あれもこれも忘れていく中で
でも、きっと忘れない
あの日の空、光
似たような風景になんて近いうちにまた
どこかで出会うのだろうけれど
泣かなかった
ひとりでも



かんたんなこと
どうでもいいこと
かってに注釈をつける悪いくせ
やりたいこと
できないこと
ノートに書き出してそのまま閉じる
雲が雨を降らすように
時計が鐘を鳴らすように
テーブルの上で待ちぼうけのマグカップ
呼吸をつづける鏡
背伸びするブーツ
優しくてつよい傘
まだここにいるわたし



日の入り
灯台のサイレンが響く
遠く、海に飲まれる寸前の強いかがやき
近く、潰れたペットボトルの鈍い反射
わたしと何の関係もないのに
どうして、
あしたは大丈夫な気がした





自由詩 サイレン Copyright ________ 2012-12-04 01:09:47
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