夜と白 Ⅲ
木立 悟





夜がひとつ 木の下に立ち
枝のなかの 空と息を見る
川の向こうの海を
音がすぎてゆく


明るい雲が
枝を照らす
火口湖を巡る鉄塔から
光が こぼれ落ちてゆく


川の両岸が赤く錆び
海へゆく径をふちどっている
骨の三角の中心に
蒼く傷んだ辞書が浮かぶ


羽毛 水紋
水底の灯
すぎるもののなかにひとり
水たまりをたどる歴史家


角砂糖の静けさが
曇の上へと押し出され
ひとつひとつが色に分かれ
音や言葉に跳ねまわる


わずかに傾いだ虹の群れ
水に映る暗がりをゆく
鉱と鉄のけだものとなり
震えと叫びを放ちつづける


水紋を持たない水滴が落ち
器は満たされ 野に街になり
無い水たまりから在る水たまりへと
すぎゆく白の行方を示す

























自由詩 夜と白 Ⅲ Copyright 木立 悟 2012-12-02 10:13:44
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