冬に見つけられてしまうと
ただのみきや

青く開いた空の深みから
一つ また一つ
無言の頷きのように
頬に
建物に
大地に寄せられる
ふわりと白い口づけ

それは
氷柱のように尖らせて行く
生ぬるい毎日の中で肥大した妄想を
さながら鑿で削るかのように


柳の木々が舞い踊る
微かな風に揺蕩いながら
緑のままの葉を落す
伝えることのできなかった
ことばを土に返すように


冬の始めが一番寒い
身も心もまだ馴染めずに
出て行くのにも躊躇する
大人になればなるほどに
痛みを知れば知るほどに

冬が迎えにきたのだ
わたしはその抱擁を受け入れる
やさしい季節だ 誰よりも
心の体温が少し下がったころ
わたしも小さな柳となって
静かにことの葉を落とす


それは片ことの遺書のようでもあり
未来の誰かへの恋文のようでもあり


自由詩 冬に見つけられてしまうと Copyright ただのみきや 2012-12-01 23:38:45
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