閉ざされた眼瞼と伝わらない言葉による意識の誘導
atsuchan69

目蓋の夜、窓の外では四角い人造石の街が美しく燃えている。

 でもタバコはやめない方がよい。

目蓋の夜、見えない戦闘機が無差別爆撃をつづけ、火炎とすさまじい爆発音が窓ガラスを割った

 「テ、テ、テ、テーへんだ、親分。
  チェルノブイリの放射能が広島の原爆の800倍で
  福島の事故がチェルノブイリ原発事故の10分の1ってことは、
  福島は、広島の原爆の80倍の放射能ってことですぜ!」

目蓋の夜、言葉巧みなレトリックが小人を巨人に見せたり陰部を聖体にかえて拝ませたりもした

 詩人は、平和なときには盛んにボケたことを呟いているが、
 有事の際にはたちまち布団をかぶって狸根入りを決め込む人種である。
 まして生活権は戦争を企てるやつらの手に握られている
 いったい詩人のうちの誰がよろこんで北朝鮮だのアフガンだのを話すというのだ? 

目蓋の夜、窓の外の事実が果たして本当かどうかも疑わしかった。

 割れた窓ガラスの向こうには下水道と火薬の匂いがたちこめている
 いや、すでに床に倒れた老人の片耳のない頭は吹き飛んで白い脳が飛び散っていた
 鮮血の【赤】が死と対峙して、ついさっきまで彼が生身の人間だったことを惨く確かに示している
 やがて瓦礫のごとき命の抜殻は屋根のない部屋に転がったまま永遠なる星々の世界を仰いだ

 つまり見たくないものを見ないためには目蓋を瞑るしかない

 往来でひとり叫んだところで誰も気づかない、誰も解らない、誰も信じない。
 それよりも少しばかり金を使って名前を売ったら、人として正しいことには一切背を向けて
 ただ意味のない言葉を綴ってほんのしばらくのあいだ詩人らしく仏頂面をしていればよい
 やがて巨悪を隠ぺいしたい営利団体が陰ながらスポンサーにつくという仕組みだ

 覚せい剤はいつでも止められます。今、彼に必要なのは止める勇気なのです

目蓋の夜、外国人労働者の採用やその他の細々とした事象についてはもうどうでもよかった
国家機密である【 X 】の【 3乗 】は【 P 】であり、【 青 】、そして肢体の一部‥‥
消えたオメガ計画の延長線上にある、巨大な核武装戦艦そのものだった日本国の終焉が【 H 】であり、
あの日、原爆投下以前に完成されていた【 時間 】が【 全裸 】で【 運転中 】だった

   アイウエオ

   イウエオア

   エオアイウ

   オアイウエ

目蓋の夜、愚民のクチ減らしには原子核の崩壊と拡散、
勇気ある自傷行為による鈍い痛みと哀しみが尖った針先で一瞬煌めく
裏通りで縺れあう男同士だとか不潔な行為だとか殺しだとか祈りだとか
もうどうだっていい、早く口でしてくれ
















自由詩 閉ざされた眼瞼と伝わらない言葉による意識の誘導 Copyright atsuchan69 2012-12-01 07:09:59
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