明日にゆくのはたやすい
佐々宝砂

そうじゃないよきみ
と言いたくてうずうずしている
大人げない大人たちに
注射器で若さを注入してやる
若さは活性酸素でできているから
一週間したら致死性の猛毒にかわる
踊り尽きた月 雲もない十二月の夜空
もう欠けることはない
もう満ちることはない
ワームホールの出口で待ち続けても
昨日の私には逢うことができないし
昨日の私は今日の私を嫌うだろう
終わったままで
リセットボタンを押して押して押して押して
そうなんだよきみ
と言わずもがなのことを言う
大人らしい大人たちに
王水をぶっかけてやる
溶けろ溶けろ
塩もかけてやる
二度と来るな
二度と喋るな
今日の私を明日の私は嫌うだろう
箒を逆さに立てかけてやる
宇宙は今夜もいいかげんで
いいかげんで曖昧なので
緻密な理屈にもめげず
しめやかに
広がり続けている


自由詩 明日にゆくのはたやすい Copyright 佐々宝砂 2004-12-19 03:16:58
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