時間の感触
……とある蛙
時間を掴み取って宝箱に仕舞っておけるのなら
僕は、初めて君と会ったあの古ぼけた体育館の片隅で
君に卓球をやろうと声を掛け、ガムをあげた
あの時間をそのまま宝箱に入れよう。
あの時の気分あの時の空間
だんだん歳を取るにつれ薄れてゆく時間の感触が
僕の記憶からあの時の君を奪う
だから僕は時間を鷲掴みにして
あの時の君と僕の気分の感触を宝箱に仕舞っておきたい。
しかし、新しい時間が僕のまわりを支配して
嫌が応にも僕のまわりの日常の時間がぐるぐる回る。
君も僕も長い時間にたっぷりと浸かってしまって
その間をリアルに歩いている間に
疲れ果ててしまった。
結局、あの時の時間は宝箱の中に入れることもできず
僕らから遙かに遠くのうすらぼやけた山の端の向こうに
ぼーっと霞んで見えるだけだ
掴むチャンスはたくさんあったのに
僕は何時も君を裏切って別の時間を掴んでいた。
もう一度掴み取ることができるのなら
あの時、あの君をそのまま宝箱に入れよう
もう忘れかけたあの時間の感触を確かめながら
あの時、あの君をそのまま宝箱へ入れよう
手遅れにならないうちに