時間の感触
……とある蛙

時間を掴み取って宝箱に仕舞っておけるのなら
僕は、初めて君と会ったあの古ぼけた体育館の片隅で
君に卓球をやろうと声を掛け、ガムをあげた
あの時間をそのまま宝箱に入れよう。
あの時の気分あの時の空間
だんだん歳を取るにつれ薄れてゆく時間の感触が
僕の記憶からあの時の君を奪う

だから僕は時間を鷲掴みにして
あの時の君と僕の気分の感触を宝箱に仕舞っておきたい。

しかし、新しい時間が僕のまわりを支配して
嫌が応にも僕のまわりの日常の時間がぐるぐる回る。
君も僕も長い時間にたっぷりと浸かってしまって
その間をリアルに歩いている間に
疲れ果ててしまった。

結局、あの時の時間は宝箱の中に入れることもできず
僕らから遙かに遠くのうすらぼやけた山の端の向こうに
ぼーっと霞んで見えるだけだ
掴むチャンスはたくさんあったのに
僕は何時も君を裏切って別の時間を掴んでいた。

もう一度掴み取ることができるのなら
あの時、あの君をそのまま宝箱に入れよう
もう忘れかけたあの時間の感触を確かめながら
あの時、あの君をそのまま宝箱へ入れよう
手遅れにならないうちに


自由詩 時間の感触 Copyright ……とある蛙 2012-11-28 17:06:23
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