黒いため息
三田九郎

満面の笑みなど
瞬間の出来事だ
幸福が滲んで
ぬくもりに包まれている時間も
どれほどのものだろう
絶望も
沈んだ時間も
似たようなもので
たいてい僕らは
喜怒哀楽のどれとも言えない
平静でもない
あいまいな思案に溺れ
さえない面持ちを持っている
日常が
多少の抑揚を持ちながらも
僕らの生を淀んだ淵に蹴落としたとき
生が
絶望とも
不幸とも違う
不快なぬめりに捕らわれたとき
人はどうして
生をやりすごしているのだろう
記憶にも
説明も
覚束ない仕方で
三十四年、僕はただ
やりすごしてきたのだろうか
なにひとつ思いつかず
眠れない夜
その疲労と
空しさに
闇よりも深く
ため息が染まる


自由詩 黒いため息 Copyright 三田九郎 2012-11-28 05:55:45
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