習作
いつも神様の国へ行かうとしながら地獄の門を潜つてしまふ人間


ノートを開いて
最初のページに
書きつける書体は
とても丁寧なのに
そのノートは
半分くらいつかったところで
鳥になってしまう
鳥になったぼくは
どこまで行くんだろう?
と思った

夜の海は眠りながら飛んでいきます
お腹が減ったら
もっとふかく眠りながら飛んで
寝言でハミングしていきます
フン
フン
フン
と擬音だけが真っ暗な空に
浮かんでは
ちいさくなっていく

フンフンと滑空しつづけると
おひさまがのぼる
紫のグラデーションを
ひとつづつ
段階てきにあげてく空
風に眼が覚める
おはよう
おはようできない
夢を食べすぎた
仲間たちが
目覚めることなく
きりもみしながら
墜落していく

たくさんのおひさまのてるばしょ
たくさんの煙突のある街から
たくさんの色の煙幕があがっている
たくさんのガレージのある街においてある
たくさんの芝刈り機が引張りだされるために
たくさんのガレージが開けられる
たくさんのガラガラという音がして
たくさんのおもちゃの車が街を走る
たくさんのひとがいるはずなんだ

雨雲の上を飛んでしまえば
いつでもそれなりな夕暮れだよ
さよならだけが人生なら
生きるということは
さよならを言うことなので
死にたくなったら
ちゃんとさよならを言うんだよ
というポエムが思いつくたぐいの
なさけない夕暮れ

どこまでも書いても
いつも飛んでいってしまう鳥を
最後まで丁寧な字で
書いてみたかった
最初から
最後まで
丁寧な書体で


自由詩 習作 Copyright いつも神様の国へ行かうとしながら地獄の門を潜つてしまふ人間 2012-11-27 02:19:27
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