退避場所
wako

2才児が
真剣な表情でタオルをたたむ
クレヨンを握った小さな手で
クッキーをつかんだ丸っこい手で
タオルをたたむ
見よう見まねで
やっと半分に

   すごい!
   上手ね
   お利口さん
   お手伝いができる

得意満面
大はしゃぎ
手を叩いて飛びはねる
もう一度折ったけれど
折ったのやら丸めたのやら
その上を小さな手で押さえる
「でき上がりよ」と

   ありがとう!
   完璧よ
   天才だね
   助かったわ

とろける笑顔と甘い口調で
散々誉めちぎる
思いつく限りの言葉を並べて

   何てあなたは賢いの
   大好き
   いつも大好き
   世界で一番!

言葉の意味など
少ししか理解してはいない
今日の事など
明日にはすっかり忘れている事だろう
褒められた記憶と
喜ばれた記憶だけが
感覚として残っていればいい

タオルは
鍵盤になり
跳び箱になり
答案用紙になっていく
得体の知れない困難にも
不条理な困難にも

この先の長い長い道のりで
平坦ではないであろう道のりで
ふと立ち止まった時にもどるところに
暖かい記憶があれば
また歩める

誉めそやす日々


自由詩 退避場所 Copyright wako 2012-11-25 13:46:47
notebook Home 戻る