The Taste Of The Glass
草野春心
1
夜に錠をかける
炭酸水に精液を混ぜる
クレジットカードに鋏をいれる
2
美術室
置きざりのままの
パレットに絞った絵具のこと
静かな静かなしずかなシズカナ……
あの月明かりのこと
3
蝶、
歌、
そして健康な睡眠
波紋をえがいて広がってゆけ
4
その日彼女は確かに死んだのだ
鉄分が足りなかったから
5
彼は夜になるとサラダボウルに人の指を入れる
一晩に一本ずつ、慈しむように置き入れる
すべてピアニストのもので
すべて小指で
しかもすべて女のものだからたちが悪いよ
と、そう僕がケータイのメモに入力したところで
電車は西荻窪を通過した
6
「ようやく冬
なのか
それとも
もう冬
なのか
なあ、
答えてくれ、
名も知らぬ蛇よ。」
7
思い出した
きみとした口づけは
ガラスの味がしたよ
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春心恋歌