The Taste Of The Glass
草野春心



  1

  夜に錠をかける
  炭酸水に精液を混ぜる
  クレジットカードに鋏をいれる



  2

  美術室
  置きざりのままの
  パレットに絞った絵具のこと
  静かな静かなしずかなシズカナ……
  あの月明かりのこと



  3

  蝶、
  歌、
  そして健康な睡眠
  波紋をえがいて広がってゆけ



  4

  その日彼女は確かに死んだのだ
  鉄分が足りなかったから



  5

  彼は夜になるとサラダボウルに人の指を入れる
  一晩に一本ずつ、慈しむように置き入れる
  すべてピアニストのもので
  すべて小指で
  しかもすべて女のものだからたちが悪いよ
  と、そう僕がケータイのメモに入力したところで
  電車は西荻窪を通過した



  6

  「ようやく冬
   なのか
   それとも
   もう冬
   なのか
   なあ、
   答えてくれ、
   名も知らぬ蛇よ。」



  7

  思い出した
  きみとした口づけは
  ガラスの味がしたよ




自由詩 The Taste Of The Glass Copyright 草野春心 2012-11-24 18:16:24
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春心恋歌