キャラメル
佐野権太

よってたかって
酷いことを言うから
精神科に行って
大変な目にあってみました

夏を飛びこして着地した僕は
金木犀のまじった朝露を
深呼吸する
勝ち組、負け組、と問えば
緊張した行司の軍配は
どっちもどっちだって
花泥棒の罪は
いつだって
かなしいかたちに裁かれる

いったい
いつになったら
菩薩のように
謙虚で、静かな微笑みに
なれるのだろう
政権がどうとか
ガザ地区とかいわれても
相変わらず僕の目の前には
大変なことが一杯あって
だから
君に会いに行けない

水色の空の
あの、はしっこを
神、ってことにして
途方のように見つめている
口に放り込んだ
キャラメルは
じわっじゅわっと
僕の分泌に絡んで
あったかい、夕陽の味がした








自由詩 キャラメル Copyright 佐野権太 2012-11-22 08:39:10
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