木の人形
ゆべし



 さあ、選別なさい、と、老女がまっ黒な風呂敷を広げ、そこからごろごろ転がり出たのは、大きな頭をした、不恰好な木製の人形だった。
 選別なさい。枯木のように固そうな手を伸べて、老女は子供を促す。
 これは誰なの。
 子供はたずねる。
 瑣末なことよ。
 老女は答える。
 選んで分けて、まとめるの。これはあちらに、あれはそちらに。
 ああ、それでは不正解よ、もう一度。
 散らかさないで。やり直し。まだだめよ。泣かないで。泣いている場合じゃないわ。
 早く続けるのよ。早くしなさい。
 何度言っても分からないのね。さっきも同じ注意をしたわ。
 愚図め。さっさとやりなさいよ。どうしてこれが分からないの。
 こんな単純で簡単な作業もできないの。ねえ、それならお前には何ができるの。教えてちょうだいな。
 ああもういや、そうやってまた泣く。泣けばすむと思っているんでしょう。どうしてこう、根性がないのかしら。腹立たしい。
 ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、アア!
 この××××――――!!!!!

 ごろん、と、子供は床に落ちて不恰好な木製の人形になりました。
 女はぎゅんっと縮まって、反対側の席に座りました。



自由詩 木の人形 Copyright ゆべし 2012-11-20 23:34:22
notebook Home