いちまいの紙
まーつん

まっさらな紙が一枚
夜空から舞い降りてきて
ふと立ち止まる 君の手元に横たわる

゛私を汚してください
 あなたの言葉で
 その指先の綴る
 文字の連なりで゛

日々
わだかまる想いで
君のおなかはおもくなる

日々
ふりつもる怒りで
君のうごきはかたくなる

そしていま
ここに一枚の紙がある

それを ひとおもいに
引き裂くこともできる

それを にぎりしめ
涙で濡らすこともできる

でも もっとすてきなこともできる
君の口が 歯をくいしばっているときも
その想いを 誰にも知られずに吐き出すことが できる

まっさらな紙

雪のように白く
幼子のように無垢な

星空のかなたから
降りおちる慈雨の
その最初の一滴のように

夜の海を渡る
鳥の背中から抜け落ちた
ひとひらの羽根のように

舞い降りてきた
いちまいの紙


自由詩 いちまいの紙 Copyright まーつん 2012-11-17 23:04:40
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